td2sk の日記

技術メモとかゲームとか

MOSAIC.WAV と物理

この記事は MOSAIC.WAV Advent Calendar 2020 の 20 日目の記事です。 昨日はげきちんさんの愚民自転車部(非公認)でした。

はじめに

MOSAIC.WAV の楽曲には、科学、ゲーム、時事等々、様々なネタが登場します。 しかし、ネタが広範囲かつディープなため、気づかないままになっていることも多々あると思います *1

今回は Advent Calendar という機会に、自分の好きな物理学に関する曲の背景や歌詞の仕掛けについて語ってみます。 みんながそれぞれ詳しい分野で語ってくれたらもっと理解が深まると思うの。

扱う曲

今回は、MOSAIC.WAV の楽曲のうち、特に物理学要素の強い以下の楽曲の背景知識や歌詞について扱います。

Gravity Pavillion (重力波,重力波天文学)

Gravity Pavillion

Gravity Pavillion

  • 発売日: 2019/10/02
  • メディア: MP3 ダウンロード

Gravity Pavillion では、曲名の通り重力(特に重力波)がテーマになっています。

この曲は、重力波によって見えるようになった広大な宇宙の領域をパビリオンになぞらえるという、エモたれ*3必須のお気に入り曲です*4。 この記事を読んだ人にもエモたれを感じてほしい。

高校の物理では、重力理論としてニュートン万有引力を習ったと思います。 しかし、これは近似理論で、より正確にはアインシュタイン一般相対性理論(一般相対論)が成り立つことがわかっています*5

一般相対論では、質量*6によって時空そのものが歪むという考え方をします。 物質や光は歪んだ空間にそって真っ直ぐ進もうとするため結果的にコースが曲がってしまい、重力に引っ張られて落下するように見えるというわけです。

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地球の重力で空間が歪むイメージ。実際には2次元ではなく4次元の時空が歪む

さて、ここで重力源(たとえば太陽)が激しく動いたらどうなるでしょうか。 地球で観測すれば、太陽からの重力が強くなったり弱くなったりするでしょう。 重力は時空の歪みなので、時空自体の伸び縮みがまるで波のようにじわじわと*7伝わることになります*8。 これを重力波といいます。

重力波(=時空の歪みの波)が伝わる様子のイメージ図。2つの星が互いを回っているような状況で強く放出される

重力波は一般相対論の基礎であるアインシュタイン方程式から出てくる現象なので、理論の提唱当初からその存在が予想されていました。もし重力波が理論通りに見つかれば、一般相対論の正しさについての強力な証拠になります。

しかし、重力波による時空の伸び縮みはほんの僅かです。理論の検証のためには、およそ 10^-21m 程度の距離の変化を検出する必要があります。 これは、太陽と地球の距離が水素原子 1 つ分(10^-10m)伸び縮みする程度の差でしかありません。

そのため、理論でも間接証拠の面でも*9重力波の存在は確実と見られていましたが、初観測に成功したのはつい最近、 2015 年です*10


Gravitational waves discovered: 'we did it'

重力波検出の発表。シンプルな喜びの言葉"We did it!"が一部で流行した

長年待ち望まれていた成果ということもあり、業績を上げてから受賞まで何十年もかかるノーベル賞には珍しく、2017 年受賞となりました。

重力波の観測により、重力波天文学という新たな分野も誕生しました。

天文学では、古来から人の目によって記録が行われていました*11。 中世、ガリレオによって望遠鏡が発明されてからも、人の目による観測であることには変わりませんでした。

近代になると、電磁気の性質が判明したことで、宇宙から飛んでくる電波全般*12を"観る"ことができるようになりました。 どんな種類の電波に注目するかで、それぞれ赤外線天文学、紫外線天文学、X 線天文学、などのジャンルがあります。

しかし、電磁波による観測には以下のような弱点があります。

  • 間に他の物体があると遮られる
  • 地球の大気でぼやけてしまう*13
  • プラズマに遮られる
    • まるで霧がかかったかのように、光ではプラズマの向こうを見通すことができません

一方、重力波は時空自体の伸び縮みのため、間に何があろうと関係なく突き抜けていきます。 そのため、光が地球に届かないような遠方のことも、重力波を調べることで"観る"ことができるようになりました。 初観測された 2015 年からまだ 5 年しか経っていませんが、たくさんの成果があります。

ブラックホールの合体

初めて観測された重力波は、2 つのブラックホール(それぞれ太陽の 36 倍、29 倍の質量)の合体現象の際に放出されたものでした*14

検知した重力波を音に変換したもの

ブラックホールは、小さいものは超新星爆発の残骸として作られることが理論的に分かっていますし、大きいもの(太陽の 10 億倍の質量など)は天文観測によって見つけることができます。 しかし、その中間の質量を持つブラックホールは、どうやってできるのかもその存在もはっきりとはしていませんでした。 今回太陽の 30 倍程度のブラックホールの合体を捉えたことで、小さなブラックホールが合体して巨大ブラックホールに成長していくという仮説の信憑性が上がったことになります。

宇宙の誕生に迫る

宇宙は、小さな火の玉が急膨張して誕生したという、いわゆるビッグバン仮説は聞いたことがあるかと思います。 この仮説も様々な証拠からかなり信憑性は高いものと考えられています。

望遠鏡や電磁波の観測で宇宙の非常に遠いところを観ると何が見えるでしょうか。 例えば 130 億光年先の宇宙を観ると、光がそこから地球に届くまで 130 億年かかるので、まさに 130 億前に起きた現象が見えていることになります。

この"遠くを見れば過去が見える"ことは、ビッグバン仮説の検証にも使われています*15

しかし、初期の宇宙はまだ膨張しきっておらず、非常に熱い(数兆~数千度)状態でした。 このような温度では物質はプラズマ化しているため、先に述べた通り光は遮られてしまいます。 そのため、この時期より前は霧がかかったかのように見通すことができません。

プラズマがなくなったのは*16宇宙誕生から 38 万年後、温度が 3000 度に下がったころだと考えられています。 そのため、どんなに遠方を見ても、宇宙誕生から 38 万年の間は、"遠くを見れば過去が見える"という手法が使えないのです。

お察しの方もいるかと思いますが、ここで重力波が使えます。 先程述べたように、重力波はプラズマの影響を受けないため、重力波を使って"遠くを見れば過去が見える"を実践すれば、もっと前まで遡ることができるようになります。

生まれたての宇宙が見えるかもなんて、ワクワクしますね。

歌詞ピックアップ

曲全体に重力の要素が散りばめられているため、全て解説すると引用の範囲を超えてしまうことになります。そのため、特に面白い部分についてピックアップで紹介します。 記事を読んだ上でぜひ歌詞カードを読み返してみてください。 新しい発見がたくさんあると思います。

  • 「身近で未知な力」
    • 自然界には 4 つの力がある
      • 重力
      • 電磁力
      • 弱い力*17
      • 強い力*18
        • 正式名称がこれ
    • 重力は一番身近な力だけれど、実は最新の素粒子論は重力だけが理論に組み込めていません
      • 電磁力、弱い力、強い力の 3 つを統一して説明するのが素粒子論の標準模型(スーパータピオカンデの方でちょっと触れます)
  • 「霧のプラズマが晴れるまでに」
    • 重力波によって霧のプラズマが晴れる前、誕生初期の宇宙の様子がわかるようになるかもしれない*19
  • 「時空をひずませて」
    • 重力による時空の歪みそのものですね。この曲は歌詞の大半の部分に重力の性質が込められています
  • 「新しい出会いと冒険の始まりの日」
    • 重力波が"見える"ようになったことで、今まで見えなかった遠くの宇宙、過去の宇宙がたくさん見えるようになった
    • 科学の目が増えて、いったいこれからどんな新発見が生まれるのかワクワクしない? 私はする

歌詞カードの繰り返しマークが星と原子なのもおしゃれ*20

スーパータピオカンデ

スーパータピオカンデ

スーパータピオカンデ

  • 発売日: 2020/06/24
  • メディア: MP3 ダウンロード

曲のタイトルは、素粒子物理学の観測装置であるスーパーカミオカンデに由来します。

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スーパーカミオカンデ。壁面のセンサーがタピオカに見えなくもない


「進化し続けるスーパーカミオカンデ」

スーパーカミオカンデは、岐阜県神岡鉱山に作られた、 Nucleon Decay Experiment(核子崩壊実験)装置、神岡(KAMIOKA) + NDE = カミオカンデ の後継機です*21

ニュートリノの観測装置として、小柴昌俊さんや梶田隆章さんのノーベル賞につながった研究で有名ですが、もともと N はニュートリノではなく核子(Nucleon)のことを指していました。

なぜ核子(具体的には陽子)の崩壊が重要なのでしょうか。

現代の物理学では、素粒子の相互作用は標準模型という理論の枠組みで概ね説明がつくことがわかっています。その"概ね"の部分を埋めて、より多くのことを説明できる大統一理論の研究が行われていますが、その候補理論では陽子が崩壊*22することが予想されています*23。そのため、陽子が本当に崩壊するのか、崩壊するなら寿命はどれぐらいなのかを調べることで、複数ある大統一理論の候補を絞り込むことができるのです。

陽子の寿命は(寿命があるとしても)非常に長いことが知られていて、少なくとも 1034 年(つまり 1000000000000000000000000 年)以上と考えられています。 ちなみに宇宙の年齢はこれと比べるとほんの一瞬、たった 140 億年(14000000000 年)程度です。*24

「陽子の寿命が 1034 年なら崩壊するのは遥か未来だから、実験したって崩壊するところは観測できないんじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、素粒子の寿命というのは生物のそれとは異質なものです。

素粒子は生物と違って老化したり病気になったりすることはありません。 いつでも産まれたてと同じような状態を維持しているのですが、まるで延々とロシアンルーレットをやっているかのように、ある時突然死にます*25。 運悪く 1 秒で崩壊を迎える陽子もあれば、1034 年程度生きるものもあり、さらには寿命の倍や 3 倍、あるいは 100 倍など、遥かに長い期間無事なものもいます。 陽子の寿命は、たくさんの陽子の寿命の平均値のことを表しているのです。

さて、例えば陽子を 1034 個ぐらい用意してあげれば、だいたい 1 年に 1 個ぐらいは確率的に壊れてくれそうな気がしますよね。

そして、陽子というのは原子の構成要素なので、物質といわれて普通想像するようなものにはだいたい含まれています*26

というわけで、ジャケット比較の写真で紹介したような巨大なタンクに水(H2O)を大量に入れておけば、毎年何個かは陽子が崩壊するでしょう*27。そしてその一部をセンサーで検知できれば*28、陽子が崩壊するという大統一理論の予想を確かめ、理論の候補を絞ることができます。 また、検知の頻度から陽子の寿命を推定することもできるわけです。

しかし、いくら観測しても陽子が崩壊するところを観測できませんでした*29*30

これは実験の失敗ということではなく、陽子の寿命の見積もりに使える重要な結果です。 大統一理論の有力候補の一つでは、陽子の寿命は 1032 年程度でしたが、そうするとカミオカンデで陽子崩壊が観測できないことが説明できません*31。 今まで説明してきた陽子寿命の見積もり(1034 年以上)は、スーパーカミオカンデによる 10 年以上の観測で 1 度も陽子崩壊が検知されなかったことを根拠に算出された値なのでした。

カミオカンデには改良が加えられ、陽子の崩壊だけではなくニュートリノの観測も行えるようになりました。 名前の由来である Nucleon Decay Experiment(核子崩壊実験)も、頭文字の NDE を変えずに Neutrino Detection Experiment(ニュートリノ検出実験)と上手に読み替えました。 *32

ニュートリノはほとんどの物質をすり抜けてしまうのですが、大量の水を用意すれば、運良く水にぶつかるかもしれません。そのときに発生する光を検出することでニュートリノの通過を間接的に検出できます。

カミオカンデによるニュートリノ検出実験では、以下のような成果が得られています。

歌詞ピックアップ

  • 「重さがあるということを世界で始めて発見」
  • 「基本的な理論の見直しを迫る」
  • 「宇宙から降り注ぐ」「観測は困難でも重さはそこそこある」「対消滅*34
  • 「世界は次第に~(中略)~分かれた」
    • ものの運動に影響する力は 4 つ
      • 重力
      • 電磁力
      • 強い力
      • 弱い力
    • 宇宙誕生当初はすべての力は1つで、冷えていくにしたがって違いが生まれ、分かれていったと考えられています
  • 「3 種のフレーバー」
  • 「1 秒間に 100 兆個」
    • この記事を読んでいる間にも1京個ぐらいあなたの体をニュートリノが通過しています

歌詞カードの繰り返しマークはタピオカミルクティーでした。 2箇所あったらニュートリノのマーク(?)だったのでしょうか。

まとめ

今回は、Advent Calendar という機会にかこつけて、大好きなMOSAIC.WAVと趣味の物理学について 2 つの曲のテーマ、素粒子と重力を掘り下げてみました。 実は現代物理では、素粒子論と重力理論はそれぞれ別々の枠組みで作り上げられており、2 つを統一した理論を作ることは未だ成し遂げられていません*35。 いつの日か、2 つの理論を統一する夢の理論が登場して、それをテーマにした MOSAIC.WAV の曲が聴けることを楽しみにしています*36

MOSAIC.WAV Advent Calendar 2020 明日 21 日目は hinayuma さんです*37

*1:私も Twitter 等で MOSAIC.WAV について熱く語っているツイートを見て初めて知ったことがたくさんあります

*2:量子論量子コンピューターについて書くには、時間と力量と余白が足りませんでした。きっと来年の Advent Calendar でやります

*3:この記事を書いているのが締め切り直前ということがバレる

*4:Spotify の集計によると、私が去年一番再生した MOSAIC.WAV の曲がこれでした

*5:ではなぜ高校では一般相対論ではなく近似でしかないニュートンの理論を教えるかというと、1. ニュートン理論のほうが圧倒的に簡単 2. 身の回りの現象であれば誤差はごく僅か ということによります。難解な相対論の計算をしても、(宇宙のようなスケールでなければ)ニュートン理論とほぼ同じ結果しか出ないので、ただ労力の無駄なわけです

*6:より正確にはエネルギー・運動量テンソル。相対論では質量はエネルギーの一形態として解釈されます

*7:じわじわと言いましたが実際は光と同じ速さで

*8:ニュートンの重力理論には、重力の変化が伝わる過程が含まれていません。どんなに遠くで星が動いても、その影響による重力の変化は無限の彼方まで一瞬で伝わることになりますが、それって何か変ですよね?

*9:連星(前掲の動画にあるような、2 つの星が互いの周りを回っているもの)の動きを観測すると、星が徐々に近づいていくことがわかります。このときのエネルギーの減少分と、連星から放出される重力波のエネルギーが一致することから、間接的に存在が確認されていました

*10:Advanced LIGO という最新の装置が稼働してからわずか 2 日後のことでした。この実験施設では、誤検知しないための訓練として時々偽物の重力波データを解析チームに渡すことになっているとのことで、早すぎる検出にチームは疑心暗鬼だったそうです

*11:たとえば、天動説は紀元前 2900 年頃~紀元前 2100 年頃の 800 年分の精密な観測データを元に、2 世紀ごろにプトレマイオスによって大成しました

*12:可視光も電波の一種

*13:そのため、ハッブル宇宙望遠鏡のように宇宙空間で観測したりします

*14:36+29=65 ですが、実際にできた合体後のブラックホールの質量は 65 より 3 小さい 62 でした。太陽 3 つ分の質量エネルギーが(有名な E=mc2 によって)重力波として放出されたと考えられます

*15:宇宙背景放射というビッグバンの名残が(電波で)見える

*16:宇宙の晴れ上がりといいます。歌詞にも出てきますね

*17:驚くことに、"弱い力"が正式名称です。由来は(電磁力に比べて)弱いからです

*18:驚くことに、"強い力"が正式名称です。由来は(電磁力に比べて)強いからです

*19:エモい

*20:現代物理学の 2 大テーマである重力と素粒子

*21:ちなみにスーパーカミオカンデの後継機としてハイパーカミオカンデが計画されています。Superluminal → Hyperluminal みたいな名付けですね

*22:複数の別の素粒子に分裂すること

*23:標準模型では陽子は崩壊しないということになっています

*24:仮に陽子の寿命を 100 年とすると、宇宙の年齢はおおよそ 100 兆分の 1 秒になります

*25:もちろん生物ではないので死ぬわけではなく、崩壊=複数の素粒子に分裂することの例えです

*26:水素原子には 1 個、酸素原子には 8 個など、原子には原子番号と同じ数の陽子が含まれています

*27:スーパーカミオカンデでは 5 万トンの水(=7*1033 個の陽子)を用意しています。

*28:実は、水はセンサーの役割も果たしています。水は陽子崩壊の影響で微弱な光を放つため、この光を光センサーで捉えることで、間接的に陽子崩壊が起きたことを知ることができるわけです。上手いことできてますね

*29:2020 年 12 月現在、陽子が崩壊する現象は世界で 1 例も観測されていません

*30:SF など創作の世界では割とよく崩壊します。たとえばこれ

*31:そのぐらいの寿命なら観測できるほどたくさん崩壊するはずなので

*32:略語の意味を後から変えたものをバクロニムといいます。MOSAIC.WAV の曲だと、H な国の科学教育に出てくる SOD が(バクロニムとは少し違いますが)ダブルミーニングになっていますね

*33:このような発見は「理論が間違っていて残念」ではなく「理論の限界を発見し改良するチャンスを与えた」と捉えられ、高く評価されます

*34:この記事で触れるには余白が足りない

*35:素粒子論に合わせて重力の量子化(グラビトン)をするのが一番安直な方法ですが、素粒子論の強力な道具である"くりこみ"は、重力には使えないことが分かっています

*36:超対称性理論(Super Symmetry,SUSY)のスージーちゃんが出たりしないかなとか色々と楽しく妄想してます

*37:投稿後にリンク予定

明るい部屋でも綺麗に映る4K超短焦点プロジェクタ専用耐外光スクリーンの購入と設置

はじめに

前回予告していたプロジェクターの機能レポートの前に、先日購入した超短焦点専用スクリーンについて書いておく。

TL; DR

  • 超短焦点プロジェクタはスクリーンの歪みに弱いよ
  • 金属フレームで突っ張るタイプのスクリーンだと綺麗に映るよ
  • 耐外光(Ambient Light Rejection)スクリーンなら、照明ついてても平気だよ

購入理由

今までは普通の布スクリーンを使っていた。

これは以前の普通のプロジェクタ(参考)の頃から使っていて、安価でそれなりによく映るのだが、歪みが出やすく超短焦点プロジェクタとの相性がよくなかった。

超短焦点プロジェクタはほぼ真下から光を投影するため、スクリーンの僅かな歪みがとても目立ってしまう。*1

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Dewarping Projected Image | Global | Ricoh より引用。同じ歪みでも、超短焦点の方が見た目へ影響しやすい

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フラットスクリーン以外の場合 電動巻上フラットスクリーン(ケースタイプ・背面アーム付き) | スクリーンのことならシネマ工房へ より引用

歪みについては、金属製フレームに張力をかけて張るタイプのスクリーンを使えば解決できる。 某所で相談したら100万円(!?)の製品を勧められたが、そんなお金はないので AliExpress で探しはじめた。

いくつかの製品を調査する過程で、超短焦点プロジェクタ用に耐外光(ALR: Ambient Light Rejection)という種類のスクリーンが使えることを知った。 スクリーン表面をギザギザに加工することで、超短焦点プロジェクタが投影する下からの光を選択的に反射してくれる。 f:id:td2sk:20190828233628j:plain

そのため、日差しのある日中や照明の点いた室内でもそれなりに見れるようになる。

検討の結果、今回は以下の100インチスクリーンを購入することにした。 ja.aliexpress.com

組立

まずはスクリーン裏側の金属フレームを組み立てる。

一度フレームを退避して、スクリーンを投影面が下になるよう床に敷く。 退避したフレームを上から載せたら、スクリーン端の透明ビニール部分を思いきり引っ張り、フレームに巻きつけるようにして固定する*2

均等に引っ張らないと歪みがでるので、表面の状態を確認しながら何度かつけ外しを繰り返す。ここが一番重要。

最後に見栄えを良くするための枠を取り付けて完成。 付属のフックを壁にネジ止めして、フレームに引っ掛ければよい。

表に見えるフレームは実測7mm幅ととても狭額。

結果

暗い部屋での抜群の発色の良さはもちろん、照明をつけた状態でも十分に実用できる。

暗い部屋では、普通のテレビと変わらない綺麗な映り。

100インチはでかい。

まとめ

大画面はいいぞ

*1:通常のプロジェクタでは、スクリーン正面方向から光が入射するため、多少の歪みは目立たない

*2:写真ではスクリーンの裏表を間違えて固定している

安価な 4K HDR 超短焦点レーザープロジェクタ Xiaomi (Mijia) MJJGTYDS01FM について(仕様調査/開封編)

前々から購入を検討していた4K超短焦点プロジェクタが、セールで約23万円という衝撃的な価格*1となっていたため、ついに購入した。

今回は、超短焦点モデルを選んだ理由とカタログスペック、開封までをまとめた。 次回記事で画質や設定項目について確認する。

TL;DR

  • 6畳間で大画面を楽しむには超短焦点が必要
  • 仕様に曖昧なところがあるため、可能な範囲での仕様確認と疑問点の洗い出しをした
  • 国内利用にあたっての注意点をまとめた
  • 内容物を確認した

なぜ超短焦点を選んだのか

昨年、安価なフルHDプロジェクタを購入した。

当初は背の低い机の上において利用していたものの、投影範囲を避けて座るのが難しいという問題があった。

仕方ないので、いろいろ苦労してプロジェクターを天井吊りにしたことで、この問題は一応解決した。

しかし、時々頭をぶつけるなど、邪魔であることに変わりはない。 また、普通のプロジェクタを6畳間に置くと、せいぜい110インチ程度のスクリーンサイズしか確保できない。

一応、2部屋使うことで150インチの表示を得ることはできるが、部屋を跨いでの投影も簡単にできることではない。

そのため、6畳間で手軽に150インチを楽しめる超短焦点プロジェクタが必要になった。 また、150インチ級の画面でフルHDでは粗さが目立つため、可能なら4Kにしたいと考えた。

購入したもの

Xiaomi Mijia MJJGTYDS01FM を Banggood から購入。4/20に注文、5/5に到着した。

www.banggood.com

似たような商品名・価格で、解像度1080pの旧モデルも売られているので、間違えないように。

商品名に4Kと入っていても信用してはいけない。*2

スペック

メーカー公式の製品ページは中国版のみ用意されている。

www.mi.com

現状中国のみでの販売であり、発売から日も経っていないためか、有益な実機レビューは見つからなかった*3

以下に、各所から引っ張ってきたスペックを統合・一部修正して記載した。合っているかは不明。

解像度周りの疑問点に関しては後述。

項目
光源 レーザー (ALPD 3.0*4 )
光源寿命 25,000時間*5
表示方式 DMD*6
解像度 4K (3840 x 2160)*7
サポート解像度 最大 4K/60Hz
明るさ 1,500ANSIルーメン? *8
コントラスト比 3000:1
投影比 0.233:1
投影距離 0.1 ~ 0.5m
表示サイズ 80~150インチ
インターフェイス HDMI2.0 x 3, USB3.0, AudioOut, AVInput(?), S/PDIF, LAN
オーディオフォーマット MP1, MP2, MP3, WMA, WAV, OGG, FLAC, AAC, Dolby Digital, Dolby Digital Plus, M4A, DTS-HD?*9
電源 200-240V / 50-60Hz (100Vでは動作しない)
3Dサポート *10
本体重量 7.2kg
商品重量 9.5kg
寸法 410 x 291 x 88 mm

日本国内での利用

  • 無線LAN(802.11a/b/g/n)対応しているが、当然技適マークはない。有線LAN、もしくは FireTV など技適の通った製品と組み合わせることになる
  • Xiaomi がカスタムした Android 6.0ベースのOS (MIUI TV)が入っている。デフォルトの言語は中国語だが、設定変更で英語にできる。日本語はない
  • 付属の電源ケーブルは3ピン(Oタイプ)で、対応電圧も200~240Vと、日本で一般的な100Vには非対応。200Vコンセントがあればアダプタだけで利用できるはずだが、ない場合は100V→200~240Vの昇圧器を別途用意する必要がある

解像度についての疑問

このプロジェクタの表示素子で使われているDMD方式は、極めて高速な画面の切り替え*11ができる。そのため、以下の図のように1フレームのうちに1画素をずらして表示することで、低い実解像度のパネルでも実質4K相当の映像表現を実現できる。 f:id:td2sk:20190511131154p:plain 出典: Beam shifting - Optotune

このプロジェクターが、この画素ずらしを利用して4K化しているのか、パネルの実解像度が4Kなのかは、仕様に記載されておらず調べても分からなかった*12*13

DMD 方式については、製造元の Texas Instruments の解説動画がたいへん分かりやすい。 youtu.be

実際に表示した際の画質や対応周波数等は次回記事で確認予定。

開封

外箱

海外通販なので、商品の箱に直接伝票を貼り付けて送られてくる。箱の上部には取っ手が付いているため、持ち運びはしやすい*14f:id:td2sk:20190511151219j:plain

中身

Xiaomi らしくシンプルな包装。 f:id:td2sk:20190511151423j:plain

同梱品は、説明書(中国語のみ)とリモコン、レンズ掃除用マイクロファイバークロス。 電池は単4が2本(同梱されていない)。 f:id:td2sk:20190511151541j:plain

プロジェクタ本体。中央下の透明部分から光が投影される。その両脇にあるのはおそらく人感センサー*15f:id:td2sk:20190511151810j:plain

端子類。 プロジェクタ本体には一切ボタンがないため、リモコンを無くした場合はコンセントを抜くしかなさそう。 f:id:td2sk:20190511152007j:plain

電源ケーブルとアダプタ。 f:id:td2sk:20190511153049j:plain f:id:td2sk:20190511153104j:plain f:id:td2sk:20190511153116j:plain

まとめ(TL;DR再掲)

  • 6畳間で大画面を楽しむには超短焦点が必要
  • 仕様に曖昧なところがあるため、可能な範囲での仕様確認と疑問点の洗い出しをした
  • 国内利用にあたっての注意点をまとめた
  • 内容物を確認した

次回は画質や各種設定項目について更新予定

*1:4K超短焦点プロジェクターは、2015年には500万円、直近でも70~100万円で安い方だった

*2:表示できる解像度が低いのに、入力だけFHDや4Kに対応させておいて、それを商品名に入れて販売しているサイトが多々ある。日本のAmazonもほとんど無法地帯といった感じで、国内通販サイトでも信用できない

*3:中国国内向けサイト(BiliBili や Weibo)でユーザー投稿の開封・レビュー動画が何件かはあったが、中国語が分からないので詳細は不明

*4:映画館等で使われるレーザープロジェクション技術らしい。調べたもののよく分からず

*5:3,000時間程度で交換が必要なランプと違って交換の手間がない(1日4時間の利用でも17年以上保つ)。そもそも交換できる仕様ではなさそう

*6:デジタルミラーデバイス。超微小(1辺10μm程度)な鏡が秒間数万回駆動で角度を変えることで、反射の方向を制御する方式

*7:TI の 0.47インチ DMD を使っていることは間違いないが、画素ずらしで4K化しているのか実解像度4Kなのかは不明。詳細は以下

*8: 5,000ルーメン表記しているところが多いが、それは光源自体の明るさ

*9:Weibo の公式アカウントより https://www.weibo.com/5836533026/Hc3PYmN9o?refer_flag=1001030103_

*10:どの形式かは不明

*11:秒間数万回、つまり数万fps!!

*12:映像を見る分にはあまり影響はないと思う。PCと接続して細かな文字を表示する際は、画素ずらしの方式によっては字が滲むケースもある (そもそも内部的にYCbCr4:2:0だったらどのみち滲むが、本機は少なくとも入力については4K/60p RGB888(YCbCr4:4:4)をサポートしている模様)

*13:画素ずらしと書いてないからといって、画素ずらしをしていないと判断するのは早計だと思う。あえて書かない/誤解しやすく書くケースが多々あるので

*14:名前の入った伝票が貼られているため写真は省略

*15:目を傷めないよう、覗き込みを検知して自動消灯するため

FireTV (4K対応モデル) がある条件下で 720p 表示しかできなかった件の調査と解決

はじめに

先日、安価なフルHD対応プロジェクタを購入した。

このプロジェクタにはネットワーク機能がなく、単体では動画配信サービスを利用できない。 そこで、FireTV とサウンドバーを接続して Amazon Prime ビデオで映画を観ようと思ったのだが、なぜか解像度が 1280x720/60Hz (720p/60Hz) となってしまった。

FireTV は 4K 出力に対応しており、プロジェクタが 1920x1080/60Hz (1080p/60Hz) の表示ができることも確認済みであるため、本来は 1920x1080/60Hz での表示となるはずである。

この記事では、原因究明にあたって行った検証と、その結果についてまとめる。

構成

今回のシステム構成は以下の通りである。 f:id:td2sk:20180921210504p:plain 各機器の間はすべて HDMI ケーブルで接続している。 また、サウンドバーには 4K/60Hz の HDMI2.0 信号をパススルーする機能がついており、サウンドバー/プロジェクタ双方に HDMI 信号を送るためにこれを利用している。

また、FireTV の設定画面に表示される、この構成で選択可能な解像度は以下の通りである。*1

  • 自動
  • 720p/60Hz
  • 720p/50Hz

サウンドバー、プロジェクタには解像度固定機能が存在しないため、これら機器の設定による解決も不可能である。

調査

原因としてまず疑ったのは、サウンドバーとプロジェクタを接続する HDMI ケーブルである。

HORIC ハイスピードHDMIケーブル 5.0m ゴールド 4K/60p HDR 3D HEC ARC リンク機能 HDM50-014GD

HORIC ハイスピードHDMIケーブル 5.0m ゴールド 4K/60p HDR 3D HEC ARC リンク機能 HDM50-014GD

HDMI は高速デジタル信号を取り扱うため、どうしても長距離伝送が難しく、特に 4K/60Hz (18Gbps)などの 帯域を限界まで使う場合に問題が生じやすい。そのため、一般的な HDMI2.0 フルスペック対応ケーブルは、長さが 5m 以下に制限される。 *2

今回は 1080p であるため、ケーブルの長さや質に対する要求はそこまでシビアではない。しかし、5m のケーブルを利用していること、スペックの割に安価であることから、ケーブル原因説を最初に検証した。

仮説 映像ソース サウンドバーの有無 HDMIケーブル 映像出力先 結果 ここから言えること
(最初に試した構成) FireTV あり 5m プロジェクタ 720p/60Hz ?
ケーブルの初期不良? FireTV あり 5m(別のケーブルに交換) プロジェクタ 720p/60Hz 別のケーブルでも再現するため、ケーブルの初期不良や断線の可能性は低い
安価なケーブルのため、長距離で高解像度の伝送ができない? PC なし 5m PC ディスプレイ 2160p/60Hz ケーブル自体は4Kも通せるため、長距離減衰が原因とは考えにくい
本当にケーブルの問題なのか? FireTV あり 1m (別のケーブル) プロジェクタ 720p/60Hz 十分短い別のケーブルでも再現するため、そもそもケーブルの問題とは考えにくい

検証により、ケーブル自体は問題ないことがわかった。よって、原因は機器にあると考えられる。

さて、次は FireTV の挙動を検証することにした。 プロジェクタとサラウンドスピーカーは少し前に入手しており、それぞれ単体では、 PC と接続した際に 1920x1080/60Hz で動作することは確認できていたからである。

そこで以下の検証を行った。

仮説 映像ソース サウンドバーの有無 HDMIケーブル 映像出力先 結果 ここから言えること
FireTVに問題がある? FireTV なし なし(直結) プロジェクタ 1080p/60Hz FireTV単体の問題ではない
FireTV以外の機器でも1080pは出ない? ChromecastUltra あり 5m プロジェクタ 1080p/60Hz 問題なく1080p出力される

この検証結果は、FireTV 単体に原因があるとしては説明できない。そのため、原因は複数機器の接続によって生じていることがわかった。 ありうる組み合わせは 4 つだが、ここまでの検証でいくつかの可能性は除外される。

  • FireTV と プロジェクタ → 直結の場合は問題なかったため除外
  • FireTV と スピーカー
  • スピーカーとプロジェクタ → Chromecast とつないだ際は問題なかったため除外
  • 3 つ全て

このうち、FireTV と スピーカー の組み合わせについて調べるため、以下検証を行った。

仮説 映像ソース サウンドバーの有無 HDMIケーブル 映像出力先 結果 ここから言えること
FireTVとスピーカーの組み合わせに問題がある? FireTV あり 5m PC ディスプレイ 2160p/60Hz FireTVとスピーカーの組み合わせも原因ではなさそう

さて、こうなると 3 つ全ての組み合わせによる問題なのだろうか。 そうなるといずれかの機器を買い換えなければいけないが、買い替えて動く保証もない。

しかし、ここであることに気がついた。

FireTV とサラウンドスピーカー、PC ディスプレイをつないだときの、FireTV の解像度選択画面である。

1080p/60Hz がない!!!!!!!!!!!!!!!!

これには衝撃を受けた。1080p/60Hz というのは最も一般的な解像度ではないのか。720p なんて謎解像度より優先されるべきでないのか。なぜこれが使えないのか。

FireTV、 サラウンドスピーカーのパススルー、プロジェクタ、PC ディスプレイが、それぞれ単体では 1080p/60Hz を利用できることは、これまでの検証結果からはっきりしている。なのになぜ、このような現象が発生するのか。

この結果から、原因の最有力候補が定まったため、確定のための検証と解決策の検討に入った。

次項を見るまえに、読者のみなさんもぜひ原因を推理ををしてみてほしい。*3

原因

原因は「HDMI をパススルーしているサウンドバーが特定条件下で EDID から 1920x1080/60Hz の情報を削る」である。

EDID とは、映像機器をつないだ際に、機器名やメーカー名、対応解像度などをやり取りするために使われるメタデータのフォーマットである。

普段、PC をディスプレイやプロジェクタに接続すれば、自動的に解像度が変更される。 これは、機器同士が EDID をやりとりして、表示可能な解像度を認識できるからである。

EDIDCEA EDID Timing Extension data format - Version 3 の項目をみると

(中略)
 14  480p2x         4:3     8:9       54.0                1440x480p @ 59.94/60 Hz
 15  480p2xH       16:9    32:37      54.0                1440x480p @ 59.94/60 Hz
 16  1080p         16:9     1:1      148.5               1920x1080p @ 59.94/60 Hz
 17  576p           4:3    16:15      27.0                 720x576p @ 50 Hz
 18  576pH         16:9    64:45      27.0                 720x576p @ 50 Hz
 19  720p50        16:9     1:1       74.25               1280x720p @ 50 Hz
(中略)

などと解像度の定義が並んでいる。先頭のカラムが解像度の ID である。 たとえば、1080p と 720p50 をサポートする機器は、ID 16 と 19 を送信する、という具合である。

さて、本題に戻ろう。

FireTV に ADB で接続して*4、logcat を眺めてみよう。 FireTV の HDMI 出力をプロジェクタに直接接続すると、EDID に含まれる対応解像度一覧が表示される。*5

これは、プロジェクタがサポートしている解像度の一覧である。

一方、 FireTV をサウンドバーを介してプロジェクタにつないだ場合は以下のようになる。

なぜかサウンドバーを通すと、EDID から 1080p60Hz が抜け落ちてしまう。 "パススルー"とはなんだったのか……。

おそらく、サウンドバー自身が音声信号を読み取る都合上、EDID のうち音声に関するものは、"映像機器とサウンドバー双方がサポートするもの"を提示する必要があり、そのため EDID を書き換えるようになっているのだろう。その際に、解像度のサポート範囲まで書き換わってしまうようだ。

今回利用しているサウンドバー(YAS-108)の EDID に関する振る舞いを検証してみたが

  • 機種名やメーカー名は書き換えず、プロジェクタの返す値をパススルー
  • 対応解像度については、何らかの条件で一部が書き換わる
    • ChromecastUltra のときは 1080p/60Hz を利用できていたため、必ず 1080p が欠落するとも限らない

という、なんともスッキリしない結果が得られた。この状況を説明する合理的な仮説はいくつか立てられるが、私の環境では検証が難しいため、ここでは触れない。*6

残念ながら私は HDMI の専門家ではないので、HDMI 信号をダンプして解析するような専用ハードウェアは持ち合わせていないし*7、問題の解決にこれ以上の調査*8は必要ないため、解決策の検討に移る。

解決

原因さえ分かれば解決は難しくない。

まず真っ先に思いつくのが、EDID を無視して解像度を設定するという手である。*9 サウンドバー自体は 1080p/60Hz をサポートしているので*10、EDID にこの解像度が含まれなくても問題はないはずだ。

しかし残念なことに、FireTV の設定画面にこの機能は見当たらなかった。

また、FireTV の隠しコマンド*11で非常用の解像度変更ツールが起動するが、ここでも EDID でリストアップされた解像度しか選択できない。

他にも、FireTV は Android ベースなので、ADB で接続して解像度を直接変更する*12という手段もありうる。 だがこれには root 権限が必要なため、今回は断念した。*13

root 不要の方法としては、FireTV の settings コマンドがある。これは、ADB 経由で FireTV の設定項目を直接変更するためのコマンドである。
解像度に関する設定は secure 名前空間amazon_settings_hdmi_resid という変数で指定できる。 この変数には、前述の EDID の解像度リストの ID を指定する。

(中略)
 14  480p2x         4:3     8:9       54.0                1440x480p @ 59.94/60 Hz
 15  480p2xH       16:9    32:37      54.0                1440x480p @ 59.94/60 Hz
 16  1080p         16:9     1:1      148.5               1920x1080p @ 59.94/60 Hz
 17  576p           4:3    16:15      27.0                 720x576p @ 50 Hz
 18  576pH         16:9    64:45      27.0                 720x576p @ 50 Hz
 19  720p50        16:9     1:1       74.25               1280x720p @ 50 Hz
(中略)

1080p/60Hz は 16 なので、コマンドは次のようになる。

$ settings put secure amazon_settings_hdmi_resid 16
$ reboot

しかしこのコマンドでも、EDID に指定されている解像度でなければ反映されなかった。*14

残念ながらソフトウェアによる解決法はなさそうだ。 *15 なのでハードウェアを探そう。

EDID に起因する不具合は"まれによくある"問題のようで、これに対処するため、EDID の内容を自由に設定できる機能を持った機器が販売されている。 このような製品はピンキリで、高いものは数百ドルするが*16、 今回は、比較的安価な以下の機種を購入した。

この機種には"つまみ"がついており、EDID 内のサポート解像度/音声ch数をどの値に書き換えるか選択できる。 また、デバイスの出す EDID を記憶して、それを別の機器との接続時に再現することもできるようだ。

今回は 1080p / 5.1ch オーディオ という適切な EDID がプリセットされていたのでこれを使う。*17

そして、機器を以下のように接続する。

f:id:td2sk:20180922084056p:plain

さて結果は

どうすればよりよい問題解決ができたか?

ここまでの検証手順は、問題解決後に振り返りながら書いたものであって、実際には実を結ばなかった試行錯誤をいろいろしている。 どうすればもっとスムーズに解決できただろうか。 反省点は以下の通り。

  • 当初はケーブルを疑いすぎており、他の原因が頭になかった
    • ケーブルが問題になることは比較的よくあるが、簡単な検証で解決しなかったときは、切り分けを早い段階で実施すべきだった
    • ケーブルが安すぎたので信用が置けなかった
      • 念の為に2本購入していたため、個体不具合の可能性をすぐに除外できたのは良かった
  • ケーブルが原因でないと分かった後、しばらくは場当たり的な検証を繰り返してしまった
    • ケーブルが悪いという決めつけが間違っていたことで、思考停止に陥った
    • 何をどの順で検証するか考えてから試すべきだった
  • 金で解決するという選択肢の優先度を上げるべきだった
    • EDID 書き換え器は 2,000円程度で買えるわけで、調査にかかった時間を考えれば、たとえこれで解決しなくても買っておくべきだった
    • 早い段階でこの可能性も候補には上がっていたが、接続する機器が増えることを嫌って、検証の優先度を下げてしまった
  • 1080p/60Hz で検証すべきところを、2160p/60Hz で確認してしまった
    • 4K が大丈夫で FHD がダメ、ということはないという思い込み
  • EDID というものの存在を知っていたのはよかった
    • 知らなかったとしたら、信号の減衰等を疑ってブースターの購入・検証などを試していたと思う
    • 雑学・教養レベルでも、規格・プロトコルの中身を知っておくといろいろ役立つ

最後に

FireTV を開発した Amazon にこれだけは言っておきたい。

解像度を強制変更する設定画面は絶対に用意しろ*18*19

*1:FireTV は Android ベースであり、つまりは Linux である。root が取れればなんとでもなるのだが……

*2:非常に高価なケーブルでは10m超、場合によっては100mというものもあるが、これは HDMI の信号を光ファイバーに載せ替える等、伝送方式が異なっている

*3:これはミステリ小説ではないので、フェアな出題でないことはあらかじめ断っておく

*4:FireTV は Android ベースなので ADB が使える

*5:このログの直前に、EDID の生のバイナリデータのダンプも表示される。他にどんなデータがやりとりされているのか、面白いので各自で調べてみてほしい

*6:例えば、スピーカーのファームウェアがパススルーできる対応解像度の数に上限があるとか

*7:数百ドルから入手できるようだ

*8:サウンドバーのファームウェアのバイナリに関係する EDID が埋め込まれていないかと調べてはみたが、ちょっとの手間で解析できるようなものではなさそうだった

*9:PC にはある

*10:ChromecastUltra での実験結果より

*11:リモコンの<<キーと上キーを同時長押し

*12:例えば echo 1080p60hz > /sys/class/display/mode とか

*13:最新の FireTV は root 取れるんですかね?

*14:設定画面上では反映されたように見えるのだが、実際の設定時に EDID のチェックが入るようで、結局 720p に自動設定されてしまう

*15:あったら教えてください

*16:HDCP2.2 を HDCP1.4 にダウングレードするといういろいろ危なそうな機能がついていたりするらしい

*17:H: 1080p 3D 5.1ch という項目を選択した

*18:変更後に OK を押さなければ時限で元に戻る、PCでお馴染みのアレ。FireTV にもそれらしい隠し機能はあるが、結局 EDID の提示する解像度しか選ばせてもらえない

*19:既にあったらごめん

買ってよかったもの2017

今年買ってよかったものをメモ。あとで追加するかも。

家電

ドラム式洗濯機 - BD-SV110A

買ってよかったベストオブザイヤー。
雨降ったら洗濯物干せないなーとか部屋干し臭うの嫌だな、みたいなことを考える必要が一切なくなった。
夜中だろうが豪雨が来ようが、服突っ込んでボタンさえ押せば、乾燥までされてシワが伸びて出てくる。
畳むのだけが唯一残った面倒なので、将来はランドロイドを買いたい。

食洗機 - NP-TH1-W

こちらも時短家電。皿突っ込んでスイッチ押すだけで新品同然に綺麗になって出てくる。
いまどきわざわざ洗濯板で洗濯しないのと同様、あって当たり前になるべき家電。

どのモデルも庫内が意外と狭いので、できるだけ大きいものを買うとよさそう。
フライパンやボウルなど、調理器具も突っ込めるので、凝った料理を楽しむ余裕が生まれる。

コードレス掃除機 - eufy HomeVac

ロボット掃除機は去年2台買って使っているが今年はこちら。
完全充電式&手を汚さずにゴミを捨てられるトレイが購入の決め手。
普段の掃除はロボ任せにして、残った隅とか、ちょっとしたホコリを取るようにスポット的に使う。

43インチ4Kモニタ - BDM4350UC/11

こんな記事(
大画面4KテレビをPCディスプレイとして利用する際に考慮すること)を書くほどの43インチ4Kフリークなので、セールで我慢できなかった。
現住所2台目。実家込だと3台目。

家具

ゲーミングチェア - AKRACING PRO-X-RED 赤

見た目が格好いいというだけの理由で買った。
貧乏人用オフィスチェア。

台所用品

へら - MARNA K286R

鉄製だとフライパンのテフロン加工に傷つけそうなので柔らかいものを選んだ。
凹みがあるので取り分けたりひっくり返したりもしやすい。

消毒用アルコール - ドーバー パストリーゼ77 スプレーヘッド付

消毒&清掃用アルコール。食品に直接噴霧OKなので、台所周りの掃除で重用。

ゲーム

Nintendo Switch - 任天堂 Nintendo Nintendo Switch

Vita2がほしいと心から願っていたので予約開始日に即ポチ。
こんなに人気出るとは思ってなかった。
タイトルも傑作揃い。

クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり! - クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!

思い出補正で買ったが、素晴らしい完成度に感激した。まさに愛のあるリメイク。
1&2にもタイムアタックが追加され、歯ごたえ十分。

mineo エントリーパッケージ - ケイ・オプティコム K-OPTI.COM mineo エントリーパッケージ

mineoの契約手数料(3,000円)が無料になる謎の紙切れ。1,000円。

ダイエット関係

カルピス ゼロカロリー - ゼロカロリーのカルピスすっきり 1500ml×8本

2.5ヶ月で14kgの減量に成功した立役者その1。
最近はこれとコーヒーしか飲んでない。
流石に本物と同じ味ではないが、他のゼロカロリー飲料と比べると相当美味い。
「スイカに塩」理論同様、甘さを引き立てるために若干塩が入っているのがポイント。
なぜか Prime Now で買ったほうが安い。

おでん - セブンプレミアム おでん 483g

減量の立役者その2。
安い、腹が膨れる、そこそこ美味い、わずか177kcal。
減量初期の主食。

スマートウォッチ - mi band2

時計 + 活動量計 + 睡眠計 + 目覚ましが付いて定価$23はもはや異常。
一回の充電で20日持つのもすばらしい。

体重計 - Mi Smart Scale2

体重の他に、体脂肪率、水分量、内臓脂肪、筋肉量、骨密度などを測ってくれる。
Mi Scale1は機能が少ないので注意。

その他雑貨・オブジェ

メガネ - JINS

古くなってきたメガネを新調し、ついでに予備も作った。
極度の乱視持ちのため、メガネがないと日常生活すら困難だが
普通のメガネ屋では薄型レンズ料金で+3万円はかかる。
JINSは本当にフレーム代だけで作ってくれるので、予備やおしゃれで気軽に作れて本当に感謝している。

電子体温計 - テルモ TERUMO ET-C231P

15秒ぐらいで体温が測れる。

チラシお断りステッカー - チラシ・勧誘印刷物の無断投函は一切お断り! 高耐候性ステッカー 30X150mm ヨコ型

ポストに貼っておくだけで広告類が激減する。

ガジェット類

スマートフォン - HTC U11

信者なので。
発売当時、スマートフォンカメラの評価で世界最高得点だった。実際、適当に撮ってもいい感じになる。
以前使っていた HTV31 は電池持ちが酷かったが、こちらは体感で2~3倍持ち、日中に電池切れになることがなくなった。
SoCのおかげかAndroidバージョンのおかげか。

VIVE アダプタ - HTC VIVE デラックス オーディオ ストラップ

標準の固定方式(ゴムバンド)とはなんだったのか、と思うぐらい安定する。
もうこれ同梱にしたほうがいいんじゃないかな。

ハンドルコントローラ - Logicool ロジクール LPRC-15000 ドライビングフォース G29

フィードバック付きのハンドルコントローラ。VRヘッドセットを装着して、フェラーリで首都高を爆走するのが最高に楽しい。

スマートスピーカー - Google Home mini

セール時に2つ買った。思った以上に役に立つ。

低温調理覚え書き

自分用にメモ。温度設定等はあくまで自己責任で。

※特に、妊娠中の方や幼児、お年寄り、健康でない人は避けること*1

基本事項

  • 死にたくなければCooking for Geeksの低温調理に関する項目を熟読し、原理や安全性、温度設定について正しく理解すること
  • 4℃〜55℃は常温放置と同じ。加熱、冷蔵時はこの温度帯を速やかに通過させること*2

調理器具

  • 温度管理はanova precision cookerもしくは温度調節可能なヨーグルトメーカーに任せる
  • 食品を包む袋は70℃耐熱のジップロック フリーザーバッグがよい*3

牛肉(ローストビーフ、ステーキ)

先に表面に焼き目をつけ*4、軽く熱を取った後*5、55℃で1.5時間*6
55 〜 60℃でレア〜ミディアムの調整が可能。
冷やした方が薄切りしやすい&美味しいため、冷蔵庫で保存*7


鶏ハム

重量の5%の塩をまぶして冷蔵庫で1〜2日寝かせる。1%食塩水で1時間ほど塩抜きをした後、 60℃で1〜1.5時間。
塩漬け処理を省略すると、ハム感は減るがしっとりとした触感でこれもまた旨い。

サーモンのコンフィ

オリーブオイルに漬けて42℃1時間。
低温すぎるため菌は死なない。必ず生食用を用いること。

温泉卵

67.5℃ 30分

他の肉と違い、肝炎など確実な熱処理が必須の菌・ウイルスが多いため、注意が必要。

豚ロース

余分な脂身を取り、表面に火入れ。粗熱を取り、60度で2時間。薄めの肉なら1時間強でも大丈夫。
写真は60.5度1時間とやや短めの際の仕上がり。


豚肩ロース

研究中

  • 脂身は低温では長時間調理しないと柔らかくならない。10〜20時間が良さそう
  • 臭みを取るため、醤油ベースのタレにネギを入れ、漬け込みながら調理

*1:低温調理では、高温環境に耐える一部の食中毒菌が残留する可能性がある。健康な成人であればせいぜい軽い腹痛になる程度の菌だが、先に上げたような人には命に関わる症状を引き起こしうる。詳細はCooking for Geeksなどを参照

*2:Cooking for Geeksでは、この温度帯に留まってよい時間の合計を2時間としている。店で購入後冷蔵庫に入れるまでの時間や、冷たい食材が湯煎により中まで55℃を超えるのにかかる時間も加算しなければいけない

*3:長時間調理かつ、ものによっては油に漬け込むため、BPAフリーのものがよさそう。気にしすぎかもしれないが

*4:低温調理後にすぐ焼くと、中まで火が通ってしまう

*5:すぐ低温調理にかけると予熱で火が通りすぎる

*6:安全な調理時間よりやや短いため注意。牛肉の食中毒菌汚染は表面だけという前提で短縮している

*7:薄切りにこだわるなら冷凍後、半解凍状態で切る

PC用4Kディスプレイを選ぶ際に確認すべきこと

免責

本記事は30分ほどで走り書きしたため、抜け漏れ間違い重複などが多数存在していると思われる。
内容に問題があれば、コメントをいただければ幸いである。
実際の購入の際には、各自よく調査したうえで、自己責任で購入すること。
筆者は一切の保証をしない。

はじめに

4KをPCで利用する際の最低ラインとして、以下を要求する。

  • 4K60p 対応であること
    • 3860 x 2160 ピクセルが正確に表示されること
    • 秒間60Hz 以上のリフレッシュレートであること
    • プログレッシブ表示が可能であること
  • 文字が滲まないこと
  • 4Kの広大な解像度を全て作業領域として使えること
    • DPI 100%で常用できること

また、ディスプレイでは要件を満たせない場合も多々あるため、テレビをディスプレイとして使用する場合の注意点も記載する。

スペック

そもそもPC側に4K60pの出力機能が必要である。最近は Intel HD Graphics でも 4K60p が出力できるようなので、通常作業にはそれで問題ないだろう。IntelのCPUスペックのページに最大解像度の記載があるので、基本的にはそこを参照すればよい。*1

4Kゲーミングを目的とする場合、相当軽いゲームでもなければほぼ確実に高性能なGPUが必要になる。GPUの最大出力解像度は各メーカーの製品仕様ページを参照すること。ただ、GTX1080クラスのGPUでも、ハイエンドタイトルを最高設定で動かそうとしても60fpsが出ないことは理解しておこう。
自分の遊びたいゲームが十分快適に遊べるか各種ベンチでよく確認しておき、場合によってはゲームのレンダリング解像度を2Kなどに落とすことをお勧めする。その場合、本当に4Kディスプレイを買うべきかについてもよく考えた方がよい。

接続方式

4K60p をやりとりできる規格は

  • HDMI 2.0 以上
  • DisplayPort 1.2 以上

となる。そのため、PC、ディスプレイ双方に対応する端子が必要である。

HDMI 端子は広く普及しているが、HDMI 2.0 非対応であるものも多い。PC、GPU、ディスプレイなどそれぞれについてよく確認するべき*2。場合によっては1端子のみHDMI 2.0、その他はHDMI 1.4などというケースもありうる。

一方 DisplayPort は普及の度合いからは多少劣る。テレビを選ぶ場合は、まず搭載されていないと思っていい。GPUやPC用ディスプレイではこちらの端子が多くついている場合があり、またHDMI端子はゲーム機などが使うことを考えると、PC側ではDisplayPortを選んだほうがよい場合もある。
4096x2160や5Kなどのさらに高い解像度を使う場合は、DisplayPortしか選択肢がない。

ゲーム機などを接続する場合、端子数が十分にあるかも確認しておこう。

HDMI と DisplayPort の変換ケーブルで 4K60p 対応のものは非常に少なく、また高価であるため、おすすめしない。

備考

NVIDIAGPU で DVI 端子が搭載されている一部のモデルでは、なんと DVI-HDMI アダプタを搭載することにより、DVI端子を HDMI 端子として使うことができる。DVI端子を経由して音声も送信できるのである。HDMI端子が1つしかないGPUで、HDMIを2系統使いたいときに地味に便利であるので、覚えておいて損はない。


信号タイプ

色信号のフォーマットにはYCbCr444, YCbCr422, YCbCr420, RGB(24bit)などがある。
詳細な説明は省くが、PC環境ではRGBを推奨する。YCbCr422やYCbCr420のフォーマットは情報量を落としているので、PCが出力したピクセルを正確に再現できない。そのため、文字がにじむことになる。

4K対応といいつつ、60Hz表示ではYCbCr420しか使えないという場合もあるので、PC側、ディスプレイ側双方で必ず確認すること。

疑似4K

ペンタイル配列のように、1ピクセルにRGBがそろっていないパネルが存在している。映像用にはそれほど気にならないだろうが、PCでは文字の滲みが発生するためおすすめしない。
主にLGのローエンドモデルに見られる。

FreeSync/FreeSync2/G-Sync

一般的なディスプレイのリフレッシュレートは60Hz固定である。そのためGPUがもっと早い速度で画面を生成しても表示には結びつかない。一方でGPUの描画が遅いとティアリングが発生したりする。
FresSync系のテクノロジでは、画面の更新をGPUの準備完了に合わせて柔軟に変えることで、早いGPUでも遅いGPUでもより快適な体験が得られる。

G-Sync は NVIDIA 系、FreeSync は AMD系であるが、G-Syncはディスプレイ側に専用ICが必要らしく、対応モデルが非常に少ない。
FreeSyncはそこそこ対応モデルがあり、標準規格としてDisplayPortにも組み込まれた*3が、最近新しく互換性のないFreeSync2が発表された。

対応モデルは全体的に少ないので、将来性を気にするよりも、必要に応じてGPUなりディスプレイなりを、もう片方に合わせて買えばいいだろう。

DPIとインチ数

4K解像度をそのまま使う(DPI 100%)の場合、画面サイズもある程度必要になる。

例えば27インチ4Kの場合、文字の物理的なサイズは13.5インチフルHDディスプレイと同等なので、ノートPCのような距離感ではともかく、ディスプレイとしてある程度離れて使うには細かすぎるかもしれない。

43インチ4Kであれば、文字サイズは21.5インチフルHD相当であり、十分実用的である。

一方で43インチ超の場合、画面横幅が1メートルを超えてしまい、画面全体を見渡すのが大変になってしまう。
そのため、このような用途では27インチ〜43インチが限界だと思われる*4

パネル

液晶ディスプレイの表示方式としてはIPSとVAが多い。特に安価なモデルではTNもある。
IPSは主に広い視野角を持ち、どの角度からでも色合いがほとんど変化しない。一方でコントラスト比が低く、黒の表示は苦手としている。VAはその逆で、視野角が多少狭いがコントラスト比が高い。TNはさらに視野角が狭いが、応答速度が速く、価格も安い。

ディスプレイをいろんな角度から見たい場合*5、VA、TNは避けた方がよい。また、正面から見る場合でも、40インチ級のモニタを使う場合、画面の中央と画面の端では視線の入射角が大きく変わるため、VAや特にTNだと視界の端の色味が変わって見える場合がある。これらは購入前に、実機で確認した方がよい。

非正方形画素

一部の液晶パネルでは、製造上のコスト削減のため、画素が正方形でないものがある。そうすると、画面全体の縦横比も同様にわずかにずれた形となる。

典型的なのは40インチ(実寸39.5インチ)のもので、本来16:9である縦横比が20:11になっている。映像用途では気にならないだろうが、PCモニタとしてはおすすめできない。
参考: 液晶パネルの新サイズ - Capriccioso Assai

RGBとBGR

一般的なディスプレイでは、各色は1ピクセルの中にRGBの順に詰まっているが、ときどきBGRの順になっているモニタがある*6。ほとんどの用途では大きな影響はないはずだが、画像などRGB前提で作成されたコンテンツは、意図とはことなる見え方になる場合がある。フォントのレンダリングについては、OSの設定でBGR配列ディスプレイに対応可能であるため、影響はないはずである。

グレア

画面の反射具合で、カタログには以下三通りのどれかの記載がある。

  • グレア
  • ハーフグレア
  • ノングレア

グレアの方が見た目が綺麗だが、照明や自分の顔などの映り込みが激しい。
ノングレアはのっぺりした表示になるが、PCディスプレイ用途では見やすいだろう。
ハーフグレアはその中間。最近はハーフグレア相当のモニタでもカタログ上ノングレアとなっている場合があるので注意。

好みの差が激しいところなので、実機でよく確認すること。

テレビと遅延

40インチ超の4Kの場合、選択肢としてテレビも候補に入ってくる。基本的にはディスプレイとして使えるが

  • DisplayPort 搭載モデルはほぼない
  • 独自の映像処理エンジンにより、PCモニタより遅延が大きい

といった点に注意。
特に遅延は40~70msecと結構大きいので、用途によっては不適切。できれば低遅延を謳っているものを選べるとよいが、ここは用途次第。

東芝など、ゲーム対応を謳っているモデルでは、映像エンジンのモードを変更することで、遅延を小さくすることができる。

設定

4K60p、 RGB 対応のGPUとディスプレイを用意しても、標準では別モードで動作していることがよくある。
そのため、ただ接続しただけでは、文字が滲んだり、リフレッシュレートが低いままだったりする。
各種設定表示画面や購入者レビューなどで、どう設定し確認すべきか、環境ごとに調査が必要である。
例として、東芝のテレビ43G20Xの場合は、以前の記事 大画面4KテレビをPCディスプレイとして利用する際に考慮すること に記載がある。

まとめ

4Kディスプレイはまだ一般的ではなく、細かい落とし穴が多数存在している。
この記事が快適なデスクトップ環境構築の一助となれば幸いである。

参考文献等

(TODO 追記)

*1:PCメーカーの仕様表には4K60p対応について明示していない場合がよくある

*2:ノートPCなど、記載がない場合はたいてい4K非対応である

*3:Adaptive-Syncという

*4:DPI 200%など、Retinaディスプレイのように使う場合はこの限りではない

*5:ソファで横になって動画を見る、など

*6:4K43インチ界隈で最も人気の Philips のモデルなど