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少女不十分 読了(ネタバレ度:小)

少女不十分 (講談社ノベルス)

少女不十分 (講談社ノベルス)

初日に早速買って読んだ。 好みなので85/100点つけちゃうけれど、好き嫌いが分かれそう。
発売直後なので、ネタバレ要素はなるべく排しつつ読後の感情を記録しておく。

内容

作家志望の大学生と、小学四年(仮)の女の子。通学路でたまたま出会った二人の、一週間の物語。

と書くとラノベ的にはありがちで、少女に振り回されるロリコン紳士向けのお話だったり
一週間で別れが確定(死別やら離別)している少女との一時のふれあいだったりするわけだが
西尾維新がそんなの書くわけないよね。

というわけで久々の完全新作。単発物で続きはないはず。
この本を書くのに10年かかった、というコピーだが、こりゃ確かに10年かかるわ。

ジャンル

私小説風フィクション、と言えばいいんだろうか。
具体例が出てこないけど、たまにあるよね。

Wikipediaによると、この形式はオートフィクションというらしい。

感想

会話の少なさは西尾作品でもピカイチだろう。
地の文がややくどいけれど、持ち味の範囲か。

この手の、最悪の決着を薄々は勘付きながらも問題を先送りにしていく展開はかなり好き。
致命的な破綻へと、じわじわ近づいていく緊張感がいい。

主人公がどこまで作者と対応しているのか考えるのも面白い。
分かりやすいステータス(年齢や作家志望の学生であること、住んでいた町)は忠実に対応しているようだけれど
主人公の性格、ある種の強迫観念的な要素はどうだろう。
作者についてこのような形であれこれ想像させられるのはオートフィクションならでは。

同作者の本を何冊も読んでいることが楽しみの前提になっている構造だが、初見で読んだらどう感じるのか興味がある。

Uの印象はころころ変わるが、再読すると一貫性を見いだせるのではないかと思う。
忘れた頃にもう一度読むかは微妙だが。

気になる点

逃げないことに対する理由付けがやや弱いかなぁ。
主人公の行動に慣れ始めた後半でも割と違和感が残るので、序盤は特にそう感じる。

読み終えた直後、締めに関して綺麗にまとめすぎ、蛇足だという印象が若干あった。
けれど作中主人公が自らの創作指向を示すことで、それはオートフィクションという対比により現実世界にフィードバックされる。そう考えれば、自然というかこれしかない幕引きであるとも言える。

この話、続かないと思うがどうだろう。
案外君と僕シリーズのように展開していく可能性もあるかもしれない。

まとめ

最近漫画すら積ん読してた自分が一気読みしてしまった。
好みが分かれると思うので人に勧めるかどうかは悩みどころだが、西尾作品を何シリーズか読みきった人はきっと楽しめる。

ネタバレ排除を意識しすぎた結果、感想が相当ぼやけてると思うがご勘弁を。